#61『lapis adamans』メイキング
投稿動画のあとがきです。
MADLIVE EXP vol.441お疲れさまでした。言葉をなくすほどに感情が一杯になりました。運営や作者のみなさんが作品やキャラクターを想う気持ちがこれでもかとぶつかってきた最高のイベントでした。感無量すぎて本当に語る言葉がなく、見てないやつはいいからタイムシフト見てくれ!くらいしか言えないです……
今回は製作時に考えていたことを少しだけお話したいと思います。
1.テーマのこと
#強い外的な力を受けて炭素はダイヤモンド結晶を形作る
さて今回はアイドルマスターシャイニーカラーズ(以下シャニマス)と椎名林檎の「人生は夢だらけ」の組み合わせでしたが、いかがだったでしょうか。「人生は夢だらけ」は人生の良いも悪いことも含めて良いもんだぜ、と歌っていると思うのですが、まさにアイドル、それを支える事務所、街の人々、ファン…といった「人の生き様」を描くシャニマスのコンセプトとも親和したものだったのではないでしょうか。
今作では、シャニマスで描かれるアイドルという業界の厳しさや、アイドル個人の悩みといった負の側面にフォーカスしたいと思い鋭利で攻撃的なグラフィックや暗い色彩とその中で光るという演出を積極的に取り込みました。
またモチーフとして宝石のダイヤモンドを取り入れています。ダイヤモンドは炭素原子からなり、地球の地下深くの高圧・高温という極限環境で生成される結晶です。これをアイドルの置かれた状況に置き換え、彼女たちの持っている負の側面や業界や仕事のあり方といったプレッシャーが黒鉛であった彼女らを光り輝く宝石に仕上げているのだという解釈をしました。
余談ですがダイヤモンドは炭素原子のみからなり、その実黒鉛と構成は何も変わりません。ただ結晶構造がかわるというだけでその本質的な部分は変わらない― これは、アイドルたちに輝きを”見出し、支援する”というプロデューサーの行為と重なるものがあり、少し面白いですね……。
▲炭素原子をイメージしている。中に映るのはアイドルたち。この場面の映像は気づいた人もいるかも知れないがシャニマスのはじめのPVと同じ構成を採っており、シャニマスという物語の始まりをイメージしている。
▲少し引きの画で、空間に乱雑に飛び交う炭素粒子を見せる。それぞれが「繋がり」を持つことで変質していく。誰かにとっては友人、あるいは家族、ファン、社会…
▲単体でいる炭素原子、層状に結合しているもの(黒鉛)、3角錐型に結合しているもの(ヤイヤモンド)などが散らばっている。
▲更にカメラが引きダイヤモンドの構造→ラフダイヤ(研磨等の未だ加工されていないダイヤモンドの素体のこと)に変化する
▲審査用紙のようなものをイメージ。具体的にはアメリカのダイヤモンドのグレーディングを行う機関であるGIAのレポート用紙を参考にして作成した。ダイヤモンドは4つのC(カラット、カラー、クラリティ、カット)で評価される。言うまでもなくダイヤモンドとはここではアイドルのこと。人間を宝石に例えているので4Cの表記は「""」でくくっている(どうでもいい)。
▲研磨加工後のダイヤモンドは鑑定士によってその品質を見定められる。光で照らされたダイヤモンドが”ありえない色”を放っていることを表現することで彼女たちがただ単純に美しいものではないということを物語っているつもり(次のシーンに続く)。だけどそのまばゆさは本物に違いない…
以降、冬優子や円香のブチギレシーンに繋がっていく…。
※迫真シーンで笑うところじゃないんだけど、子供っぽくて可愛いく思えてニコニコしちゃうんだよな。
2.後半のこと
この後半部分は当初前半2分程度で切るつもりにしていたところを切りどころが見つからなくて無理やり全編作ることにしたため、制作の手が回っていない部分が残り、不十分な出来になってしまっています。
内容としてはストーリー性のある前半とは対象的に各ユニットのグラフィック中心のとりあえず見た目が良い映像を目指しました。一方で課題も山積しました…振り返りながら反省点をまとめます。
#構成
各ユニットごとの印象カット+本編の演出で構成。加えて各ユニットでデザイン趣向やを切り替えて、飽きさせない映像を目指しました。
▲イルミネーションスターズ: 三角形と天体をイメージ。イルミネのコンセプトは自分に足りていない部分の自覚、自分にないものを持ってる人へのリスペクトやそれ故の仲間・協調の大切さを伝えることにあるように感じる。欠けた部分を補って3人で1つの強い引力を生み出す星になる、そんなイメージ。
立ち絵がなくて苦し紛れのガラス枠でのキャラ表現。MADでキャラ紹介はしてはいけないという鉄の掟があるのですが。破ってしまった…
▲アンティーカ: 鏡と束縛をイメージ。アンティーカは社会や他人にどう見られているのか、自分はその要請に対してどう向き合うのかという内向的なテーマが多い気がする。故に鏡面に自身を映し出したり、がんじがらめになっているような鎖などのオブジェクトを配置している(絶対に伝わってない)。上から見ると万華鏡のようになっており、”多様な内面”が存在していることを示唆している(これもうまく伝えられてない)
▲放課後クライマックスガールズ: 季節をイメージ。放クラは季節の移り変わりや思い出(過去)、時間的な変化をテーマにしていると思う。故に季節感のあるフローズンバーや水、紅葉といったモチーフを取り入れた。階段はもちろん放クラを表す象徴的なコミュである「階段の先の君へ」がモチーフ。もう少し商店街や木々などのオブジェクトを盛り込めたら良かったかも。
ところでこのフローズンバー、「未知なるFROZEN 西城樹里」で食べてたと思しきフローズンバーのショップであるパレタスさんの商品を参考にしたんだけど、コミュ内では果穂と夏葉は口にしていなかったのでショップのサイトを参考に勝手に想像して追加した。お品書きは智代子:ベリーニ、凛世:ミガキイチゴ、果穂:ミルキーミックス、樹里:ミックスウェスト、夏葉:カシスオレンジとなっている。果穂は、「すごいです!!フルーツが全部入りです!!ヒーローっぽいです(戦隊モノ)!!!」って言って選びそうだと思った。夏葉はどこかで植え付けられた紅茶花伝のオレンジのイメージが強かったので(おい!)
それはともかくすごく美味しそうなので次の夏はフローズンバー買ってみようかな。
▲アルストロメリア: 私の好きなもの、がテーマなんですかね?(曖昧)アルストロメリアの花をちらしているけど少し殺風景に。当初はイラストとして好きな「トキ・メキ・タコさん 桑山千雪」を参考に、3人のガラスオブジェクトの周囲にかわいい雑貨などをゴリゴリに配置したかったけど制作が間に合わず…でした。
▲ストレイライト: 本当の自分と嘘の自分、そしてその両方の自分を認めること、がストレイのテーマだと思う。リバーシのオブジェクトをモチーフに取り込んで、白黒の面に映される、あさひと愛依、そして両面に映り込む冬優子を表現してみた。関係ないけど白・黒・赤の色彩はかっこいい。Maggot baitsという作品のオープニングムービーにインスピレーションを受けた。(気になる人はyoutubeで探してみてほしい。とはいえアダルトゲームの映像で過激なところがあるので、要注意)
▲ノクチル: あまり決定的なテーマを持って作れていない。青春とか成長とか言う言葉でノクチルを解釈することはできるんだけど、未だ十分に理解しきれていないので、あくまで、元のコンセプトである「海」と「夜光虫」(=揺らぐ小さな光)をイメージした映像となった。一方で尺の都合で駆け足気味の微妙な映像になってしまったと思う。
ノクチルは、アイドルになる動機を持っていないアイドルという面白い側面があり、他のユニットに比して異質であるので、映像も同じ用に異質にしてもいいかもと考えた。ワンカットの長回しの映画のようにこの間ずっと実写の海を映し出すみたいなのはどうだろうと思ったけどキャラの素材不足で諦めた。とにかく立ち絵がないというのがこれほど大変だとは思わなかった…。>>3Dモデル作ればいいじゃん。(それはそう)
3.まとめとおすすめ動画
総括すると、間に合ってないところや詰めが甘いようなところが多かったと思います。製作期間は11~1月初旬の70日に加えて2月配信直前の数日間くらい。従来の制作に対しては1.5~2倍くらい早く・速く作らないといけなかったのに、取り掛かりが遅かったのとコンセプト不明瞭で手が遅くなってしまったと思います。技術的にはあまり特別なことはしてないのでもっぱら意識と発想能力の問題でした。
一方でシャニマスmadは作るのが非常に難しいとも感じており、特に
・全身立ち絵がない(汎用的な映像の作りにくさ)
・3Dライブ映像がない(アイドルモノの映像としての弱さ)
と言った点でほしい画を作る障害が大きかったです。
下手をするとコミュのテキストや楽曲の歌詞を転記して、背景にはコミュイラストを散りばめるような映像に陥ってしまいがちです。少なくとも完全にはそうなってしまわないように本作の前半では意味性をもたせた映像に対してあくまで意味を説明するための素材としてイラストや映像を織込むことにしていました。そして演出上不要なテキストや歌詞はできる限り入れないようにしました。
しかしながら、避けるべきと考えている散りばめ系の映像でも「視聴者の知識や思い出を上手く引き出せる場合」はその雑多な感じも自然と意味を持つ(意味が後から着いてくる)ように見えると思っています。
これは決して雑多だと言いたいわけではないことを前置きしますが、今回のMLE vol441では黒崎さんの「冗談みたいな物語」(day2-161)や回Pさんの「アイマスツリー」(day3-187)などはまさにその線をうまく突いている作品に思えました。(キャラや作品への深い理解や文脈把握、素材の”本当に上手な”組み合わせ方ができていると思える説得力が作品から滲んでいるように思えました(ヤバい))
(そういうのを作れるようになりたいけど……難しい)
最後に、唐突ですがシャニマスの動画ですきなものをご紹介します。みなさん見てください。
シャニMADで一番好き。歌詞テキストが多めで曲のイメージに頼りすぎてるところがあるけど、比喩的な表現が積極的に織り込まれてて作者のオリジナリティがある作品だと感じた。とても好みです。
ハニーワークスの元ネタ映像があってそのパロディmadですが装飾が非常にかわいくて大崎姉妹に似つかわしいです。可愛さ全振りの映像も作ってみたい。
難しいこと、人と違うものを作ろうとしてるのが見えるのがとにかく良い。多様性こそ正義です…
モーショングラフィックス系の代表格と言える作品。基本はリリックビデオ形式ですが、ギミマス4コマとかゲーム内のSDキャラをふんだんに盛り込んで飽きさせない内容になっていると思います。とにかく自由で元気な映像の印象です。
全日程のタイムシフトが下記より視聴できます。何度もいいますが、単品投稿では生み出せない、ライブの良さを感じられる配信だと思います!ご興味、お時間があればぜひ。
以上です。お付き合いいただきありがとうございます。また今度!
2020年下半期の映像はええぞうwwwwwwww
前回の整理に引き続き、今年見た良いクリップ後期分(2020.7~12)をまとめました。
ジャンルは不問(だけどMVがほとんどかな...)
一部はツイッターで紹介していただいたものです。私の守備範囲外の作品も見れて大変ありがたいです。ここにないものでもまだまだ沢山あると思います。コメント欄などで追記いただければ幸いです!
▼2020上半期分はこちら
■■■7月■■■
Director:OSRIN(PERIMETRON)
Director・Story・Animation・Composite/Takumi Shiga(caviar)
movie : 尾崎伊万里
Movie by OTOIRO Director: DMYM
movie: 抹茶
production: PRHYTHM VISION
Animation : coalowl
Director 黒井心 Support せむ
■■■8月■■■
あらゐけいいち
Director:Jun Tamukai (CONNECTION)
アニメーション こむぎこ2000
Typograph▶Kaoru Miyazaki Movie▶庵/サトウくん
Director:ぬヴェントス / NNNuventus
Movie _ihcanan
ムービー:Syamo
Director : ぽぷりか(Hurray!)
Illustration:しぐれうい Movie:Yuma Saito
dir. ?
監督/大橋史
■■■9月■■■
Director:murAta Yuzi
映像 : えむめろ
監督:朝倉すぐる
Movie - 原田ぬれ
映像:鑓田(alpha complex)、TOHRU MiTSUHASHi
監督:松本理恵 キャラクターデザイン:林祐己 アニメーション制作:株式会社ボンズ
映像:森江康太
ムービー制作:gram6design
映像制作:鑓田(alpha complex)
■■■10月■■■
動画:えむめろ
●Design / Movie / Produce● 出前
監督:細金卓矢(mimoid)
video edit mastered by Gianni Peri & Mitsushi Maruyama
movie: 原田NuRE
MV: Somon&Soresaki
[Movie] カザリ / Kazari
Production: ?
Production: ?
production: 株式会社フエテ
Movie Design/癸乙夜 〔映像制作スタジオMju:Z〕
movie by 百舌谷
■■■11月■■■
Dir. Syamo
Production 神風動画
Dir. すこっち Edit 抹茶
Production 白組 Producer : 井上浩正 Director : 森田淳也
Movie: OTOIRO Dir.:サイトウユウマ、イノウエマナ
Dir ?
Dir. kairi
映像:お菊
PV:TOHRU MITSUHASHI
■■■12月■■■
Dir. こむぎこ2000
Video Creation:葛飾出身
Movie:Mariyasu
[graphic/movie]kairi
動画:Yazhirushi, 桜井貴志
[Direction/ Motion Design / Edit / Photographer / Sound Effects] 朝倉すぐる
監督:sskai
ムービー:ニライカナイスタジオ(LHa、rapiecage)
MV - 安田現象
movie:中絲悠
以上62作品でした。
いや、全員天才だろ。。。
2020年上半期の映像はええぞうwww
2020年上半期のお気に入りまとめです。
ほぼYoutubeなのでブログにまとめる意味があまりない...
偏りがあるのでおすすめあったらおしえてください!
1月
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初音ミク - マイマイマイ (买买买) / Mitchie M【2020拜年祭】
chelmico「Easy Breezy」【Official Music Video】
RAM RIDER - 東京論(Tōkyō-ron) Official Music Video
2月
驟雨の狭間 from shun yamaguchi on Vimeo.
【MV】MASAKARI / 朝ノ瑠璃&朝ノ茜【VirtuaREAL.01】
ポカリスエットweb movie|「バーチャル東京サプライ少女2020 青く駆けろ!」篇 Full Ver.
新章アイマリンプロジェクト第1弾「Stand up! Blaze up!」MUSIC VIDEO Full Ver.
3月
HaNaMiNa feat.Nanase 『Road without Road』MV【イロドリミドリ】
flower 『ジャイアントキリング』MV/ルワン - 『Giant Killing』 by Loin
名取さな - PINK,ALL,PINK!【オリジナルソング】
4月
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5月
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#60『静止した時間の中で』メイキング
お久しぶりです。恒例のMADメイキングを残そうと思います。
今作はアイドルマスターシャイニーカラーズの三峰結華というキャラクターに焦点を当てたものになっています。
1.はじめに
1.1.いきさつ
先日2周年となったアイドルマスターシャイニーカラーズ略してシャニマスというコンテンツですが、恐れながら今更知り、興味を持ち始めたにわかです。知ったきっかけは、普段追いかけてるVtuberの月ノ美兎さんのゲームプレイ配信(下記記載)でした。一体どんなものか見てみたところ、想像以上にシナリオが充実している上に、一癖も二癖もある濃いキャラが集まっており、興味深く感じていました。
【初見】"シャニマス"ってゲームをやろうと思うんだ【月ノ美兎/にじさんじ】
▲月ノ美兎 初期からのアイマスファンということで、初見にもかかわらずプレイングにストレスがない上、サブカル女としての独自のキャラ・シナリオ解釈、キモPムーブ、トークの面白さも相まって見ごたえのある配信に仕上がっている、まさに鬼に金棒を与えたような配信になっています。まったくシャニマスを知らなかった私でもめちゃくちゃ楽しめましたのでおすすめです。
さて、シャニマスの一癖も二癖もあるアイドルたちの中でも今回取り上げた三峰結華というアイドル、後述しますがこれがもう曲者の中の曲者みたいな人間で、下記の動画では「史上最も多くの怪文書を生み出させた女」と形容されるほどです。私自身は月ノ美兎さんの配信で初めて知りましたが、その後↓の動画でその深淵を覗くことになりました。
1.2.NOT≠EQUAL 地獄の入り口
上の動画にもありますが、三峰結華を決定的に曲者たらしめたのは「NOT≠EQUAL」というコミュでしょうか。かくいう私も例外ではなくこのコミュにがっちり心臓を鷲掴みにされ、悪魔の囁きに唆されるがごとく今作を作る(作ってしまう?)ことになったのです。
具体的な内容については省略しますが、このコミュの特筆すべきポイントは三峰結華という他人と距離を起きたがる人間の、自分は距離感を保っていい関係を演じきれているという自惚れや無意識に人に近づきたいと行動してしまう可愛い部分や、それに気がついて傷つく姿、そして何より自分を殺してでもシャニPの気持ちを尊重する優しく、それでいて自己完結的で勝手、という複雑なキャラ像を描いたところにあると思います。
素晴らしいコミュなのでぜひ見てみてほしいと思います。(>>素人に言われなくても。 おっしゃるとおり…!)
2.構成について
2.1.事前準備(どういった雰囲気、全体観にするか)
≠コミュの魅力に取り憑かれた私ですが、このコミュのストーリーを伝えること、そして三峰結華の人間性に魅力を感じたことから、どういう人間なのかが少しでも理解るよう構成を練りました。(全く知らなくても少なくとも画面に書いてあることを読めば分かる程度にはしたかった)特にテキストは読めるように丁寧に出すよう心がけました。
全体的なルック(映像の見た目)は、コミュ内容的にしっとりしたイメージにするのが良いと考え、落ち着いた雰囲気の紺色をベースに画面が散らからないように色数は少なくし、差色にオレンジを選択しました。よく映画の色調などでティール&オレンジなどと呼ばれる色遣いですね。(この場合の青は緑に近い方の青を指すのかもしれませんが…)
三峰の特徴として他人との精神的な境界についてかなり意識的なキャラクターに見えましたので、「境界線」をキーワードにいくつかのモチーフを折込していきました。
・境界線 ・雨 ・水色(カラー) ・あじさい
その他眼鏡とかカメラとかサブカルとかあると思いますが今回は無視しました。
2.2.粗構成
基本的には構成はNOT≠EQUALコミュを時系列で追っていくことにしました。
簡単に流れを説明すると、
①三峰、Pにいつもと違う雰囲気だと言われ、自分でも知らない自分をPにさらしてしまったことに気づく
②自分のこれまでが何だったのか回想していく
③悩んでいるところにPがかけつけ、その言葉を聞くことにより自分の気持ちを改める
④新たな思いを懷き次のステージへ
ハプニングが起き、主人公がそれでなやみ、何らかの転機で解決策に気づき、次のステージへ進んでいく、いかにもドラマのストーリーといった感じです。セオリー通りなので非常に構成もしやすいです。
映像やシナリオの量と相談しながらおおまかに楽曲(青春の瞬き)に当てはめていくと、
イントロ:①
Aメロ :??
Bメロ :②
サビ :③
アウトロ:④
こんな感じに。おや、ひとつ枠が余りましたね。これは困った…。
さぁそんな時は常套手段のこちら
キャラ紹介!!!
いやいや、これ要るって言われて駄目だしされて終わるやん…と思うかもしれませんが、今作については三峰結華が誰なのかをそれなりに理解るようにするために、映像の主人公を明確に示す必要がありますので、Aメロはキャラ紹介としました。(よし、上手く回避できたな…)
2.3.本構成
粗構成を形にしていきます。
①イントロ
→
▲目を引くために、印象的なモチーフのカットを挿入し、その後物語を導入していきます。テキストは是非とも読んでもらいたかったので、カットは読むのに十分な長さを確保しました。一方で映像におけるテキストは画的に単調で飽きやすいので、点滅やノイズ、アニメーションをつけるなどの変化をもたせました。
→
▲カメラが三峰に近づいていき粒子になって彼女の深層に潜っていくような表現にしてみました。
②Aメロ
▲映像の主人公が現れます。プロフィールは他にもありますが名前と顔以外の情報は雑味になるので不要です。背景はあじさいの写真を加工したもので何なのかはこの時点ではわからなくてもいいと思い、画面が綺麗になることを第一に色調補正しました。さり気なく後ろの影はアイドル姿(ビヨンドザブルースカイ)の影になっていて、こちらは後ほど再び現れます。
③Bメロ 回想
▲NOT≠EQUALのシナリオをベースに過去の三峰のコミュを挿入していきます。また、ダイヤモンドやノートのモチーフ的なカットを挿入します。ダイヤモンドはアイドルの象徴であるとすぐわかりますが、真に意味するところはまた映像の後半での説明となります。
[フォントについて]コミュシナリオなど公式文章には漢字タイポス412Std、その他は平成明朝などの違うフォントで使いわけをしています。個人的には私の補足する言葉は想像に過ぎないため別物にする必要があると感じたためです。
→
▲アンティーカという単語は初出ですが、シナリオとはほとんど関係がないので主張は弱めです。アイドルとして行動していたのに枠をはみ出た行動をとっていたのではと自覚します。「枠の中」を強調し、横に円を配置し、innerという文字を付記することで、冒頭で現れた謎のモチーフがなんなのかという疑問のヒントとしています。
④サビ
▲答え合わせカットです。私の言葉なのでテキストは漢字タイポス412とは別の「平成明朝」で書いています。③で出てきた境界線が何十にも重ねて作られたものと解釈していただけるといいのですが…。境界線にポツポツと穴が空いていますが、心の壁が絶対的な壁ではないことのイメージです。上手くくぐり抜ければ三峰の本心(中心の黒円)に近づけるというわけです。(≠では三峰の方から境界を解いてきたわけですが…あぁかわいいなぁ!!!)
→
▲再び現れたのはビヨンドザブルースカイ三峰です。アイドルとしての三峰から個人としての三峰に変化します。YOU ARE (NOT) IDOLは新劇エヴァのサブタイリスペクト。みなさんはどちらであってほしいでしょうか…?雨が降っているのは時間が進む(=心が揺れ動いている)イメージです。Pと出会ったあの日も雨が降っていて、それ以来雨の日が特別に感じるようになったってエピソードいいですよね。雨が降ること=心が動かされることなんですかね? かわいいなぁ!!
→
▲あじさいの写真をバックにいくつかの言葉が枠に収められていきます。Pの言葉を聞いて心を改めた(=自ら他人と距離をとっていく)三峰の心象です。そのヒトツヒトツが集合して再び境界線を形成します。
▲再び― に続き、時間をとめる(=これ以上の関係にならない。なろうとしない。二人の距離を保つ)決意を決める三峰の心象表現です。在る種の亀裂のようだと思い、背景はシンプルにコンクリートの亀裂の写真を選びました。そこに2本の線(橋のつもり)が渡されており、角度を変えて見ると「≠」になります。どうか三峰には橋を落とさないでいてほしいですね…。
→
▲雨が降り続けるよう時間を止め決意を新たにします。③の反復表現です。そして枠の中に収められたダイアモンドになります。「**/23」というのは283プロの23人のアイドルの1人という意味を込めました。Pにとってアイドルは宝石箱のダイヤモンドであってゆえに全て等しく大事にプライドを持って愛情を注いでいるわけです。その愛情に応える(=自分を殺しダイヤモンドであろうとする)三峰、めっちゃ尊すぎませんか…。矜持に満ちててかっこよすぎる。そういうかっこいい女性すきです。
シャニマスはmad作りに適した素材というものが少なく(期待するようなものではないのだが)それ故に反復的な構成にせざるを得ませんでした。ただ、むしろそれによりモチーフの印象を強く与えられたのではと思います。さらに一歩引いて俯瞰してみると境界線から踏みでた三峰が再び境界の内側に戻り、出たり入ったりを繰り返す様子と反復構成が重なるのでテーマとの親和性もあったのではと思います(これは今思いついた)
3.技術的なことについて
ちょっと丁寧に作ったポイント解説とTwitterで質問いただいたことにお答えします。
3.1.ダイヤモンドのつくりかた
Blender Quick Tip #4 | Diamonds in Blender
▲このチュートリアルが全てです()
3.2.フォントお品書き
3.3.波紋
▲静止画だとわかりにくいですが、テキストと波紋のシェイプが重なったときに[波紋]エフェクトでテキストに揺れを起こしています。水面に浮かんでいる感じがでてると嬉しいのですが。
3.4.ライトリーク
ご質問いただきましたが、ライトリークは動画素材を使っています。その素材をどこから持ってきたかもう忘れてしまってご紹介できませんが、検索してフリーのものを使ってみると良いと思います。(何十種類か持っておけば重ねたり、色のトーンを変化させることでバリエーションを出せると思います)
最近ではスマホのカメラで光源の動画を撮影し、強めのブラーと色調補正でそれっぽい動画を作ってらっしゃる方も多く居ますので、あれこれ試してみるとオリジナリティあるライトリーク(フレアといったほうが良いのかも?)を出せて面白そうです。
https://twitter.com/TenderworksLLC/status/1256569129613455360
https://motionarray.com/learn/video-effects/free-light-leaks-overlays/
4.おわりに
いかがだったでしょうか(クソまとめ文法)
今回の調査では三峰結華さんについての謎は深まるばかりで、はっきりとした結論は残念ながら導けませんでした。しかし、そんな彼女の読みきれない部分に生きた人間性があり、それこそが彼女の魅力なのだと思います。
そんな彼女の今後の活躍が非常に楽しみですね!!!
結局≠ってなにが≠だったんでしょうか。シャニPに近づこうとする自分は自分ではない、本当の自分はアイドル三峰結華だという意味なんでしょうか。冒頭でも言いましたが曲者過ぎるんですよね。
でも、僕は知ってますよ!家にお見舞いに来たPと話していたくてつい我儘言ってしまうのをね!(神視点)。それって三峰の本質はわがままで孤独で大丈夫なふりしてるけど甘えたがりってこと!!!???Pにだけそんな姿を見せるなんてかわいいなぁぁアアいいかんげんにしてくれ。神様、助けてくれ!たす助けてください神様!!たすけてぇぇっぇ。。。。。。ファァ~~~(光になる音)
まぁ誰にもわかりませんが…。
追伸:君・空・我・空 が良すぎて頭の中で希望が出口を求めてグルグルしています。
https://togetter.com/li/1492381
それでは、ここまで見て頂きありがとうございました。またいつか~
#54『恒星』メイキング
お久しぶりです。またmadを投稿してしまいました。
今作は2019年1月26日、2月2日の二夜に渡って行われたMAD配信イベントMADLIVE EXP!!!!! vol.440の出展作品となります。
主宰の津名さんから、アイマス素材の新作を作れと脅され(正確には「できれば作って欲しい」と言われたが、並々ならぬ圧を感じた)、デレマスしか知らないですがいいですか…ということで参加させていただきました。本当に怖かったです(うそです
1.本作のテーマのお話
本イベントのテーマの一つに「温故知新」というものがありました。温故知新の意味は三省堂新明解四字熟語辞典によると
前に学んだことや昔の事柄をもう一度調べたり考えたりして、新たな道理や知識を見い出し自分のものとすること。
と言う意味らしいです。
そういうわけで、自分にとっての過去ってなんだろう、そして島村卯月にとっての過去ってなんだろうという問いかけを織り交ぜる様な映像にしてみたいと考えました。
自分の過去とは…?
本作を制作する上で過去、自分がどのように作品を作ってきたのかを振り返ってみると、尊敬する映像作家さんや好きなアニメの演出をパクり倒す(真似したい)連続だったと思い出しました。それは時としてアニメ演出家の尾石達也さんだったり、映像作家のyama-koさんや百舌谷さんだったり、あるいはMAD作者の方々(数えきれないので省略しますが…)であったわけです。ですが、いつからかその憧れのようなものが薄くなってきている実感があって、もう一度憧れや真似してみたくなる気持ちの一片でも再び思い出せたらと思い今回参考に選んだのがMirrorDanceという曲そしてミュージックビデオでした。
これ、めちゃくちゃかっこよくないですか?シェイプが音と連動するのはモーショングラフィックスの定番というか基本的な演出だと思うのですが、単にそれだけでなくて、まるで形状に意味がない・均整が取れていないようなシェイプの動作が何故か気持ちよく見える不思議さが詰まっています。
この作品を見ると今、巷で流行っているモーションが気持ち良いモーションの全てではなく、私達の中にはまだ違う気持ち良いモーションを感じ取れる受容体が存在していることが実感できます。
さて、実は過去にこのMVに似たような演出を取り込んだMADを作っています。
制作したのは2013年、実に5年以上前のMADなんですが、当時鏡面演出を取り込めなくて悔しい思いをした覚えがありましたので、今回こそはと思い再チャレンジしてみました。
ここで島村卯月さん(アニメ版)の話になりますが、彼女もまた自分のあり方について疑問を持ち始めます。周囲のアイドルたちが別々の道を見つけて進んでいく中、自分にはなにもないんじゃないかと自分が信じられなくなっていくのです。紆余曲折があり、この物語は、輝けるかどうかわからないけど輝きたい思いが確かにある!という風に締めくくられます。
なんだか少しわかる気がしますよね。あの日あの時できていたことができなくなっていく…自分が何をしたいのかよくわからなくなっていく…
若者特有の根拠のない自信が喪失する瞬間というやつでしょうか。でも、実際自信なんかあの日もなかったことに気づくんです。ただあの日あの時やりたいことをひたすらやり続けて楽しくってそんな気持ちに気づかなかったり考えてなかっただけなんです。そんなこと考える暇なんかないほどに楽しんでいた。ただそれだけなんですよね。
というわけで、「あの日を思い出すこと」がこの作品のテーマなんです(唐突)
2.本作の各カットについてのお話
①光と恒星(謎オブジェクト)の展開▲足元に散らばる光るオブジェクトと鏡のオブジェクト。前者は自らの内に秘める恒星の”素”をイメージしている。後者の鏡は自らは輝きを発しないが光を反射して増幅させる「何か(応援してくれる仲間やファンやあるいは自らの輝かしい過去?)」をイメージしたもの。この時点では何の力も働いておらず、地面に散らばっているだけの静止状態。
→
▲アニメのワンシーンを抽出。卯月が歌う直前に照明が落ちるのだが、周りに光がなくとも「自ら光を放てるのか」試されていると解釈できる。良いシーン
▲恒星の素、鏡が何らかの”意味ある”力を受けて浮かび上がり、輝き出す。
▲核となる星型に恒星の素が集まり(左)、星を作り出す(右)。
まず、核に素が集まっている感じがしない、星なのかどうかわからない、2カットの連関が分かりづらい、輝いてる感じがしないなど、なんとも演出不足を感じさせる。今作一の反省箇所となった。
②星と島村卯月さんの心象
→
→
▲自分の中にある”星”が消えたり現れたり。島村卯月の心象変化
▲左:星がチカチカと消えていき、輝きを見失ってしまう。右:空を見上げ、輝きが自分の中に存在しているのか確かめるカット。「”星”はきっとそこにあるから」はShine!!の歌詞「曇り空でも星はきっとそこにあるよね」をもじったもの。
3.技術的なお話
①鏡面の破片(Blender2.79で制作)
▲完成カット あの日の感動をもう一度。元ネタMVの眼を見張るようなかっこよカットのパクリ。100%の再現にはならないがフレーム単位で何度も見返して、こうやって作ってるのか!という発見をしながらの制作となった。そう言えば昔はそんな泥臭い作り方をしていたなぁ…
→
▲左:ベジェカーブからオブジェクト作成し、鏡面の素材を9種作成。右:立方体オブジェクト内にパーティクルとして先の素材を発生させる。カメラから見えない箇所に光源となる平面をいくつか置く。
▲左:パーティクルとして存在している鏡面をくるくる回転させるためにフォースフィールド(乱流)を追加する。50fごとに強さの符号(±)が逆転するようにキーフレームを打つ(右図)とオブジェクトが回転するようになる。※元ネタのMirrorDanceのミュージックビデオでは回転しつつ破片が若干移動しているが、今回は移動は無視した。
4.おわりに
今作はいかがだったでしょうか…勝手に島村さんにシンパシーを感じてこのようなMADを作ってしまいましたが、楽しんでいただける方がいれば幸いです。
またMLE運営の方々、本当にお疲れ様でした。私も何度か修正を投げたので、面倒なことをさせてしまい申し訳ないです。
当日の熱狂とあの”繋ぎ”は本当にまさにライブといった感じで素晴らしかったです。織り込まれた過去作についてもジャンルを網羅するようなチョイスで、MADを知るという観点から大変興味深く感じました。また来年も期待しております…!
それでは、今回はこの辺で!ばいばい
お気に入り映像まとめ(2018.1-12)
2018.1~12月
▲(ゆっぴさん作)1つのソースに複数の楽曲を利用しており、型にとらわれない構成が面白いです。映画の予告編の様な感じです。
▲(kirikoさん作)けもフレ全員集合MMD動画です。モーション付けの作業量もさることながらトゥーン調の質感も可愛らしい。
▲(rarさん作)画面を彩るエフェクトが多彩。作風と相まっておぞましさとポップさが兼ね備わった非常にバランスの良い作品。
▲(Thanksさん作)モーションがやばいので一見の価値あり。
▲(鳥さん作)自由を感じられるので観てほしい
▲(しづさん作)赤黒白のキツめの色彩が目を引きます。配色の参考に
▲(ノンタンさん作)とにかく発想が良いです。
▲(TOHRU MiTSUHASHiさん作)ギラギラノイズが荒々しいのにきれいに見えます。一体どういう仕組みなのかわからないけど好きです。
▲(しょーさん作)新世代MAD感があります。特徴的なモチーフの遣い方は既往のボカロPVっぽいシンプルさと露骨さがあって今どきらしいです。
▲(てへさん作)選曲のせいなのか2010年くらいのMADを思わせるどこか懐かしい雰囲気があります。水面の素材をふんだんに利用した映像演出がとても美しいです。
▲(39+aさん作)明暗・色相の差がはっきりとした配色で各カットが仕上げられており、各カットがとても見やすく印象に残ります。文字組はポスターデザインのようでかっこいいです。正しいグラフィックデザインを感じました。
ここからはvimeo。どれもすごい(語彙消失
ここからは物述有栖ちゃん。
めっちゃ…好き
では~。